研究課題/領域番号 |
10470432
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
外科系歯学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中澤 光博 大阪大学, 歯学部・附属病院, 講師 (70217701)
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研究分担者 |
田村 啓史 大阪大学, 歯学部・附属病院, 医員
岩井 聡一 大阪大学, 歯学部・附属病院, 医員
加藤 逸郎 大阪大学, 歯学部・附属病院, 助手 (60314390)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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キーワード | 扁平上皮癌 / 癌-間質相互作用 / E-カドヘリン / 肝再生因子 / 浸潤 |
研究概要 |
口腔扁平上皮癌における浸潤の機序を解析する目的で、患者より当科で樹立したIF細胞(高悪性)及びHOSO(低悪性)2つの癌細胞株を用いて、以下の結果を得た。(1)ヌードマウスを用いた実験系でも、患者とほぼ同様の病理組織像及び病態が再現できた。(2)細胞運動性に関しては、IFは培養上清(CM)中にオートクライン運動性因子として、TGF-α、TGF-β1を産生していた。一方、HOSOは産生していなかった。(3)細胞接着分子に関しては、IFはCM中に細胞接着を減弱させる因子を産生していた。この因子は、マウス線維芽細胞(Fb)との共培養で、直接接触していない癌細胞でも細胞間接着が阻害したことから、Fbが産生するHGF(液性因子)である可能性が考えられた。一方、HOSOはそれらを産生していなかった。(4)細胞浸潤性に関しては、マトリゲル及びコラーゲンゲル基質を用いた実験結果から、TGF-αまたはTGF-β1添加群は非添加群と同様、嚢胞様構造(非浸潤性)を示したが、Fb-CMまたはHGF添加群では細胞間接着がなくなり、強い浸潤性を示したことから、TGF-α、TGF-β1ではなく、HGFが細胞浸潤性を規定する重要な因子であると推察された。そのHGFによる浸潤活性は、IFはHOSOの約4倍であった。(5)HGF産生に関しては、IF及びHOSOは直接HGFを産生していなかったが、パラクライン的に促進因子としてIL-1を産生していることがわかった。その量は、IFはHOSOの約3倍であった。(6)細胞増殖に関しては、G-CSF、TGF-αはオートクライン的に、HGFはパラクライン的に、IFの増殖因子として働いていた。TGF-βは増殖抑制効果を示した。本研究により、臨床的に高悪性のIFは、低悪性のHOSOに比べ、宿主線維芽細胞とより強く相互作用しながら、細胞運動性、浸潤性、増殖性や細胞接着分子などに影響を及ぼす多くの因子を、オートクラインあるいはパラクライン機構で多彩かつ巧みに制御しながら、腫瘍微小環境でより高い浸潤、増殖能を獲得している機序の一端が示された。
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