研究概要 |
平成10年度の研究実績としてはK13,K19,SCC antigen mRNAを遺伝子マーカーとして頸部リンパ節微小転移の遺伝子診断法の意義を検討した。頭頸部癌患者21人から得られた12の原発巣、211個の頸部リンパ節(半割し、残りは準連続切片に供した)、4口腔癌培養細胞、6正常粘膜、10対照リンパ節(良性腫瘍患者から採取)、7唾液腺を対象として、遺伝子発現を検討した。トータルmRNAを抽出し、逆転写酵素でcDNAを作成し、この産物をPCR法で増幅した。 増幅産物は電気泳動後、エチジウム・ブロマイド染色を施した。目的遺伝子確認のためサザン・ハイブリダイゼーションおよびシークエンシングを行った。 その結果、196個の組織学的転移陰性リンパ節中、K13,K19,SCC antigen mRNAはそれぞれ28個(14.3%),103個(52.6%),38個(19.4%)に発現していた。K13,SCC antigen mRNAを共発現したリンパ節は16個(8.2%)であった。対照リンパ節ではK13,SCC antigen mRNAは発現しなかったが、K19は4/10個に発現していた。準連続切片の組織学的検討では、9リンパ節(4.6%)に11個の微小転移巣を認めた。K13gene(-),K19gene(+)のリンパ節8個に異所性唾液腺の存在が確認された。以上のことから、K13,SCC antigen遺伝子の共発現が頸部リンパ節微小転移遺伝子診断の指標となりうることが示唆された。頸部リンパ節の特徴として、K19を保有する唾液腺の迷入があることやK19遺伝子は単核球からのillegitimate gene expressionがあることから、本遺伝子は微小転移の指標とはならないことが判明した。本研究成果は英文投稿中である。 本年度の研究成果としては、さらに唾液腺腫瘍への応用を図るため、唾液腺におけるケラチンファミリーの解析、種特異性の検討をおこない、英文2編に発表した。
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