研究概要 |
平成10年度の実験で使用した培養口腔扁平上皮癌細胞株培養(高転移株:5、低転移株:4)をヌードマウスの舌に移植した。これらを2群に分け、一方は細胞の移植のみを行い、他群は細胞移植日より各種濃度の以下のMMP機能調節因子を投与した。1)MMP合成、分泌抑制因子 2)MMP活性化に関与する因子 3)MMP機能阻害因子 4)TIMP産生促進因子。 両群は細胞移植20日後に屠殺し、組織学的に頚部リンパ節、肝、肺への転移の有無を確認し、さらに移植部位ならびに転移巣について以下の検索を行った。 1)MMP-1,2,3,9とTIMP-1,2の発現状態を各々のモノクローナル抗体を用いて凍結切片上で免疫組織学的に検索し、2群間の差異を検討した。2)各種サイトカインの発現細胞の確定、ならびにこれらの発現とMMP,TIMPの発現の関連性についてin situ hybridization,ならびにPCR-in situ hybridizationと免疫組織染色の二重染色の手法を用いて検索した。3)癌細胞における各種MMP,MT-MMP,TIMPならびに各種サイトカインの局在を免疫電顕レベルで検索した。4)血清、血奨を採取し、これに含まれるMMP-1,2,3,9ならびにTIMP-1,2の量をエンザイムイムノアッセイにて測定し、2群間の差異を検討した。さらに、腫瘍組織での発現量を同様の方法にて測定した。5)癌細胞株でのMMPならびにTIMPのmRNAの発現状態をノーザンブロットにて解析した。6)癌細胞でのMMP,TIMPの発現ならびに活性化をゼラチンザイモグラム、ウエスタンブロットにて解析し、両群での差異を検討した。7)癌細胞での各種サイトカイン(TGF-α,β,TNF-α,IL1β,IFN-γ)の発現状態をRT-PCR法にて解析した。 以上の研究結果より、上記の各種の因子がMMP,TIMP産生、活性化に深く関与し、腫瘍進展、転移に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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