研究概要 |
口腔扁平上皮癌135例の生検および摘除生検組織を対象にEカドヘリン、カテニンファミリーの発現様式に関する免疫組織化学的検索を行い、臨床、病理組織所見ならびに臨床経過との関係を検討した。 1.検索した口腔扁平上皮癌135例の60%前後にEカドヘリン、カテニンファミリーのいずれかのタンパクの発現異常が認められた。 2.Eカドヘリン、カテニンファミリーの発現様式は、各タンパクともに一様に癌の発育様式(外向性、内向性)、癌浸潤様式(Yamamoto et al.1984)、臨床病期と発育様式の組み合わせ、分化度、細胞異型と核分裂数の組み合わせ、単核細胞浸潤、浸潤様式の各評価項目に評定を付して得られた総合点より悪性度を評価する臨床病理学的悪性度評価および頚部リンパ節転移との間に統計学的に有意の関連が認められた。すなわち、内向性、浸潤様式がhigh grade、高悪性、リンパ節転移陽性(pN_+)例では減弱型が多い結果であった。 3.対象135例の転移関連因子は、原発部位、発育様式、N評価、TNM分類、分化度、浸潤様式、臨床病理学的悪性度評価およびEカドヘリンカテニンファミリーの発現様式であったことから、これらの因子を多重ロジスティック分析で解析を行ったところ、N評価のみが独立因子と判明した。 4.次に、NO92例を対象に転移関連因子を検討したところ、統計学的に有意な関連を示した因子はEカドヘリンカテニンファミリーの発現様式のみであった。 5.各タンパクの発現様式別の5年累積生存率は、いずれも有意に(Eカドヘリンp=0.01,αカテニン,p=0.01,βカテニンp=0.0006,γカテニンp=0.006)非減弱型の方が治療成績は良好であった。
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