研究概要 |
ラット口唇部へ5%formalin50オ1注入による痛覚過敏モデルを用い、抹消神経組織の障害後の誘発される痛覚過敏行動を測定し、三叉神経脊髄路核部に挿入したループ型マイクロダイアリスチューブを用いて疼痛刺激時の脳脊髄液中のglutamate、aurine,Serineの量の変化を検討した。その結果、formalin注入による2層性の痛覚過敏反応の発現と注入10-20分後における脳脊髄液中のglutamate増加が明らかとなった。さらに、治療群としてformalin注入前10分にwムContoxin(N型Caチャネル阻害薬)、Staurosporine(ProteinKinaseC阻害薬 : PKC)、morphine(オ受容体作動薬)のいずれかを三叉神経脊髄路核部のクモ膜下腔内より投与し、痛覚過敏行動と脳脊髄液中のglutamate,taurine,Serineの濃度を経時的に検討した。その結果、いずれの薬剤においても痛覚過敏反応の抑制および脳脊髄液中のgulutamateの減少がもたらされた。すなわち、シナプスにおけるN型Caチャネルおよび細胞内情報伝達系PKCの不活性化やオ受容体の活性化がformalin注入による2層性の痛覚過敏反応1、2相ともの疼痛関連行動の抑制と脊髄glutamate放出の抑制が明らかとなった。このことより顔面部痛覚過敏の発現では三叉神経脊髄路核と過敏状態では痛覚情報の三叉神経脊髄路核と隣接する部への入力およびその抑制様式について、シナプス前、後の伝達、細胞内情報伝達系での調節機構が非常に重要であり、その一部が本研究により解明された。 現在では、これら薬理学的根拠に基ずく治療法の理論的基盤を得ることを目的として神経栄養因子、mRNAの挙動を含めた連鎖する分子レベルでの調節機構の解明を行っている。
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