研究概要 |
1)無血清培地によるリンパ球培養系の確立 ヒト末梢血リンパ球の芽球化反応を各種浮遊細胞用培地を用いて比較検討した.その結果,SFM101無血清培地(以下SFM101)を用いて培養したリンパ球で最も高い芽球化反応を示した.さらに,本培地で扁平上皮癌細胞(KB)の無血清馴化培養が可能であることが明らかになった. 2)CD26(DPP)IVの発現抑制因子の分画 SFM101でKB細胞を培養した培養液を限外濾過膜カラムを用いて5つに分画した.この粗分画のうち,分子量8,000〜30,000の分画を添加して培養したリンパ球では,芽球化反応およびCD26の発現が低下した. 3)扁平上皮癌液性因子によるリンパ球CD26mRNA発現への影響 健常人の末梢血Tリンパ球をステムセル社製T細胞分離用カクテル,アフィニティーカラムおよびマグネット式分離装置を用いてネガティブセレクションした後,KB細胞培養液を添加して培養した.この培養リンパ球からAGPC法で抽出したTotal RNAとCD26PCRプライマーを用いてRT-PCRを行った結果,KB細胞培養液を添加して培養したリンパ球のCD26mRNAは非添加対照に比べ発現が低下していた. 以上の結果から,分子量8,000〜30,000の扁平上皮癌液性因子がリンパ球の芽球化反応を抑制しており,この抑制はCD26遺伝子の転写またはそれ以前に抑制されていることが示唆された.
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