研究概要 |
1、癌細胞由来サイトカインによるT細胞CD26発現抑制の検討 口腔扁平上皮癌由来のKB細胞の無血清培養上清(KBCM)をヒト正常末梢血T細胞(T細胞)の無血清培養上清に添加して培養したところ、KBCM添加によってフィトヘマアグルチニン(PHA)刺激によるT細胞の増殖,リンパ球抽出液および培養上清中のCD26/DPPIV活性が低下した、KBCMを、限外ろ過およびイオン交換クロマトグラフィーを用いて分画し、それぞれの蛋白分画中のサイトカインを同定したところ、頭頸部癌細胞に由来するT細胞CD26発現抑制因子としてGM-CSF、IL-6およびTGF-β1が考えられた。そこで、KBCMを含むT細胞培養実験系に中和抗体を添加してT細胞の増殖、リンパ球抽出液および培養上清中のCD26/DPPIV活性を測定した。その結果、CD26発現抑制は、抗TGF-β1抗体で中和されたが抗GM-CSF抗体と抗IL-6抗体では中和されなかった。 2、癌細胞由来TGF-β1によるT細胞CD26発現抑制の検討 KBCMを添加して培養したT細胞は、非添加で培養したT細胞に比べ、細胞周期がG0/G1期である割合が増加していた。さらに、ウェスタンブロットでは25kDaの活性型TGF-β1が癌細胞から産生されていること、CDK2インヒビターであるp27^<kip>の発現が持続していることが明らかとなった. 以上の結果より,口腔扁平上皮癌由来活性型TGF-β1がT細胞の活性化とCD26/DPPIVの発現を抑制していることが明らかとなった。
|