本年度は、口腔扁平上皮癌細胞に由来する末梢血T細胞抑制因子を明らかにすることを目的とし、ヒト口腔癌培養細胞のKBとヒト正常末梢血T細胞の無血清同時培養系を用いて検討した。その結果、以下の点について明らかとなった。 (1)T細胞のCD26/DPPIVの発現量は、KB癌細胞培養上清中の8-30kDa蛋白によって抑制された。 (2)KB癌細胞は、IL-6、GM-CSF、TGF-β1を産生している。 (3)KB細胞由来TGF-β1は、ミンク線維芽細胞の増殖を抑制することから、このTGF-β1は25kDaの活性型(成熟型)である。 (4)CD26の発現が抑制されたT細胞の細胞周期はG1期である。 (5)T細胞では、KB細胞培養上清中に見いだされる8-30kDa蛋白の作用によってCD26/DPPIVの発現量が減少するとともに、cdk2インヒビターであるp27^<kip>の持続的発現がみられる。 (6)T細胞抑制作用は、TGF-β1の中和抗体によって中和された。 以上の結果から、T細胞は口腔癌細胞から産生された活性型(成熟型)TGF-β1によってcdk2インヒビターであるp27^<kip>が持続的に発現して細胞周期がG1 arrestとなり、T細胞活性化サイトカインの産生が低下し、CD26/DPPIVの発現が減少すると考えられた。
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