研究概要 |
1.口腔内に形態的異常のある小児の摂食・嚥下運動の超音波診断装置による観察 歯科領域で発生頻度が高く,出生直後から摂食嚥下運動に障害を有する唇顎口蓋裂児を対象に吸啜運動時の舌運動の観察を行った。舌運動の観察には超音波診断装置を用い,哺乳ビン内圧の同時記録を行った。吸啜圧と舌波形のピークを比較することにより,舌背3部位の上下動の時間差を求めるとともに,舌運動の深度を計測することで吸啜時舌運動の波状成分を定量化することが可能であった。また,エコーウィンドを顎下部に設定することで舌骨の上下動が確認でき,明確な嚥下反射誘発時を同定することが可能であった。唇顎口蓋裂児の吸啜運動は健常乳児に比較して運動周期が延長する傾向であった。Hotz床装着により,唇顎口蓋裂児の吸啜時の舌運動の改善が示唆された。 以上のように,唇顎口蓋裂患者の吸啜運動時の舌動態および,Hotz床装着の効果について明らかにした。 2.健康な幼児の摂食・嚥下運動の解析 昨年度までに採得した健康な6人の幼児の摂食・嚥下運動の観察記録を検討した。その結果,嚥下時の舌運動中において特に呼吸と協調して機能を営む上で非常に重要な部位であり,これまで報告の少なかった舌根部を含めた舌背の矢状断面の動態を明らかにすることができた。これにより,幼児の嚥下動態は乳児型嚥下から成熟型嚥下への移行期にあることを明らかにした。また、健康な幼児のデータを定量的に解析することにより超音波診断装置を用いた嚥下運動検査の参考値を得ることができた。
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