研究課題
基盤研究(B)
骨細胞は骨基質内に埋もれた状態であるが、互いに、あるいは骨表面の細胞と連結して細胞間ネットワークを形成し、骨改造過程に重要な役割を担っていることが指摘されている。しかし、歯の移動時に加わるメカニカルストレスが歯槽骨内部に存在する骨細胞、および細胞間ネットワークにどのような影響を及ぼすかについては不明な点が多い。そこで本研究では、菌の移動時における圧迫側および牽引側での歯槽骨・細胞間ネットワークの動態について、形態学的、免疫組織学的、そして遺伝子組織学的に検討することを目的とした。1. 実験動物および歯の移動方法実験動物として生後8週齢のWistar系雄性ラットを用いた。歯の移動は、矯正用加工硬化型NiTi合金ワイヤー(0.152mm)を使用し上顎第一臼菌の近心移動を初期荷重約10gで行う方法を撰択した。その結果、圧迫側歯根膜における硝子様変性の出現部位がある程度特定されることから、本研究における実験方法として適していることが明らかとなった。2. 歯の移動に対する歯槽骨の反応性について歯に荷重負荷後、早期(6時間後)に硝子様変性組織が出現し、7日後にはほぼ消失した、荷重負荷後6時間で変性組織に対応する歯槽骨骨細胞の一部に核の濃縮が認められ1日目では、核の断片化および骨細胞の消失がみられた。その後、骨細胞の消失範囲が広がっていった。さらにアクチン抗体による免疫染色、PI染色をおこなったところ、変性組織に対応する菌槽骨骨細胞の一部に細胞質の変性、消失及び核の濃縮、断片化が認められた。このことは、メカニカル・ストレスに対する骨細胞の反応というよりも、変性組織の出現による歯根膜サイドからの細胞間ネットワークの消失によるものと考えられた。今後はさらに、骨細胞の代謝活性のマーカーとなり得るさまざまな成長因子、サイトカイン等についても検討を加え歯槽骨・細胞間ネットワークの動態を明確にしていく予定である。
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