研究分担者 |
杉原 直樹 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (00246349)
高木 多加志 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (90192145)
佐藤 亨 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (50192092)
平井 義人 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (80119742)
田崎 雅和 東京歯科大学, 歯学部, 助教授 (40155065)
高江洲 義矩 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (60048303)
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研究概要 |
研究目的:本研究は、咬合咀嚼機能の心理学的(主観的評価)側面を口腔診査,咬合診査などの客観的評価によってどこまで捉えることができるか、咬合咀嚼機能の維持増進のための指標と保健指導の内容とはどのようなものかを明らかにすることを目的としている。 研究対象および研究方法:被検者は総数682名であり,解析は18-20歳代(486名(男性:398,女性:88)),30-40歳代(98名(男性:63,女性:35)),50-60歳代(85名(男性:47,女性:38))の年齢群に分けて行った。咬合咀咀嚼能の主観的評価はアンケート調査によって行った。客観的評価として用いた2つの咬合診査法(T-ScanおよびDental Prescale)は,咬頭篏合位で記録した。歯の状態は歯面別に診査を行い,DMFS index,健全歯数および喪失歯数を求めた。咬合診査による測定結果から.T-Scanについては咬合接触点数および左右側咬合接触点数のバランス,Dental Prescaleについては咬合接触面積,咬合力バランス,咬合力の重心の曲後および左右方向のバランスを求めた。統計学的分析はWindows版SASシステム(Ver.6.12)を用いた。 研究結果および考察:T-Scanによって求められた咬合接触面積を4群に分けた場合,“硬い食べ物の受容性"は全年齢群で咬合接触点数が多いほど硬い食べ物を食べられると応答し,とくに50-60歳代では接触点数が15以下の場合,およそ40%の被検者が“咀嚼ができない"と応答していた。Dental Prescaleによって求められた接触面積で4群に分けて解析した場合も同様であった。T-Scanによって求められる咬合接触点数は,18-20歳代を除きすべての年齢群で咬合咀嚼の能力および症状(自己評価)とに相関が認められた。Pre-Scaleによって求められる咬合接触面積および咬合力のバランスは,18-20歳代および50-60歳代では咬合咀嚼の能力と,30-40歳代では咬合咀嚼にみられる症状と相関していた。DMFS indexおよび健全歯数は,40歳代まで咬合咀嚼の能力との関連が認められたが,50-60歳では喪失歯とに関連が認められた。咬合咀嚼機能に関連する自己評価を目的変数とし.咬合診査ならびに口腔診査から得られる指標を説明変数として重回帰分析を行った。"硬い食品の受容性"は説明変数として咬合接触面積,咬合接触点数.咬合接触点の左右のバランスおよび健全歯数が選択(決定係数=0.1398)された。"咀嚼能力の自己評価"は説明変数として咬合力の重心の左右のバランス,健全歯数が選択(決定係数=0.2391)された。"咀嚼能力の変化"は説明変数として咬合力バランス,咬合力の重心の前後側バランス,健全歯数が選択(決定係数:0.2458)された。 主観的評価を咬合咀嚼に関連する能力と症状とに分けた場合,本研究で用いた咬合咀嚼機能の咬合診査による指標は症状よりも能力と関連が深いことが示された。したがって,健診時での歯科保健指導は咀嚼能力の判定に重点をおくことが有効であると考えられた。 また,30-40歳代では咬合咀嚼にみられる症状に関連を認めたことから,ヒトの生涯で歯周病の多発傾向と喪失歯が出現してくる時期で,咬合咀嚼の安定から不安定状態に入っていくこの年齢群での歯科保健指導の重要性が示唆された。
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