1.HFMマウス突然変異領域における遺伝子領域の探索 染色体歩行によって得られた突然変異該当領域の中に存在すると考えられる遺伝子領域を塩基配列の決定によるオープン・リーディングフレームの推定により検索した。 現在、約10kbの塩基配列を決定した。それらの配列を遺伝子データベースにて検索したところ、既知の遺伝子配列と高いホモロジーを示す領域が数ヶ所確認できたことにより、これまでに知られていない、また、既知の遺伝子群とドメイン構造の一部を共有する新しい遺伝子が突然変異を起こしていることが推測された。この点については、さらに塩基配列の決定を進め、最終的にはcDNAライブラリーの検索、もしくはRT-PCRにより、該当遺伝子全長の塩基配列を決定し、その機能を明らかにする予定である。 2.Hfm該当遺伝子欠損マウスの表現型の解明 ヘミ接合体同士の交配を行い、9.5日胚にて胎児をとりだし、その形態を調べた。12匹の胎児が確認できたが、そのうちの3匹は不定形の赤い固まりになり死亡していた。遺伝子型を決定したところ赤い固まりになっていた1匹がホモ接合体であることが確認できた。胎盤の大きさなどから推定して、胎児は胎生7.5日くらいまでは生存していたと推定される。この結果より、本突然変異系統で機能を失っていると考えられる遺伝子は、胎生7.5-8.5日において、正常な発生のために必須の遺伝子であることが初めて明らかとなった。 3.HMFマウスの胎生後期における病理学的検索 胎生13.5-17.5日の胎児において、頭部の病理学的検索を行ったところ、これまで異常が確認されていなかった、中耳、頬骨などの顔面骨や顔面の軟部組織においても広範囲にわたる異常や非対称性がヘミ接合体において確認された。これらの所見はHFMマウスと、ヒトHFM病理所見との更なる類似性を強く示唆し、ヒト疾患モデルマウスとしての有用性が改めて確認された。
|