研究概要 |
エナメル基質タンパク応用後の初期の歯周組織再生過程におけるセメント質、骨、上皮細胞の動態について病理組織学的に検索した.ウィスター系ラットの第一臼歯口蓋側およびビーグル犬の前臼歯頬側に裂開型骨欠損を作製、露出根面のセメント質を除去し、実験群(EMD群)は露出根面にエナメル基質タンパク(EMDOGAIN【○!R】、Biora AB)を塗布、対照群はそのまま創を閉鎖した.術後1,2、3,4、8週に屠殺、標本作製後、H-E染色、PCNA免疫組織化学染色、アルカリフォスファターゼ(ALP)染色を行った.組織計測は骨形成量、セメント質形成量、再生付着上皮および根表面のPCNA陽性細胞率を計測した.その結果、再生付着上皮のPCNA陽性細胞率は術後3、4週で実験群が対照群より低く(p<0.05)、術後8週の実験群では上皮のダウングロースが抑制されていた.根表面のPCNA陽性細胞率は実験群が対照群より高く(p<0.01)、実験群のALP活性は根表面に沿って歯冠側方向に認められたが、対照群ではノッチ部付近の根表面に限局していた.根表面から離れた結合組織には両群ともALP活性は認められなかった.術後8週のセメント質形成量は実験群が対照群より多く(p<0.01)、骨形成量は実験群と対照群間に有意差は認められなかった.以上の結果から、エナメル基質タンパクは上皮のダウングロースを抑制し、セメント質再生を促進するが、裂開型骨欠損においては骨原性細胞の増殖、分化を促進しないことが示唆された.
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