研究概要 |
1. ラセミ体CFTAの簡易合成法の開発と異性体識別能の検索 市販のp-キシリルシアニドを原料として短工程,高収率でCFTAを得た.これをCFTA塩化物とした後,キラル中心が反応点から離れたキラル求核剤と縮合してCFTA誘導体とし,^1H NMRおよび^<19>F NMRにおけるジアステレオマー間の化学シフト差を測定し,CFTAがCFPAと同等の,すなわちMTPAに比べて格段に高い異性体識別能を有することを明らかにした. 2. 光学活性CFTAの簡易入手法の検討 CFTAの高純度かつ大量合成を念頭に,種々の光学活性アルコールやアミンを用いるCFTAの簡便分割法を検討したが,現在までの所,酵素法に勝る分割法の開発には至っていない.卓上凍結乾燥システムの導入によって,酵素法におけるCFTAの抽出効率が大幅に改善された. 3. 絶対配置決定法の検討 CFTA誘導体は他の類似試薬に比べて1桁大きな化学シフト差を与えるため,明確な安定配座をとっている可能性が非常に高い.そこで,CFTA構造に関して立体配座を調べるため実験と計算を行って,以下の結果を得た. i) 絶対構造既知の2級アルコールとのCFTAエステルの^1H NMRおよび^<19>F NMRにおけるジアステレオマー間の化学シフト差を測定したところ,アルコールの絶対配置との相関が観察された. ii)CFTA誘導体のab initio計算により,基底状態における安定配座とそれらの間のエネルギー差を求めた.その結果,F-CαとC=Oの関係がsyn-periplanarになっているsp配座とanti-periplanarになっているap配座の2つの安定配座が存在し,^1H NMRの結果を説明できるsp配座の方が安定であることを明らかにした. iii) 低温でのNMRを測定したが,ピークのブロード化が起こり,配座異性体のピークの分離を観察するには至らなかった.今後,測定溶媒の検討が必要である. iv) ネオメントールのCFTAエステルのX線結晶解析を行い,結晶状態ではF-Cα-C(O)-O-C-Hがすべてsyn-periplanarになっていることを明らかにした.
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