研究概要 |
工業原料であるインドリン(1)を原料として、1-ヒドロキシインドールの化学という、新規な学問領域を樹立することに成功し、活発にその展開研究を本年度も実施中である。 その結果、1から、本研究の重要中間体である 2,2´-ビスインドール(2)の合成法の開拓に成功した。また、類最古の染料であり、工業的生産法も確立されたインジゴを還元して、2および3-アセトキシ-(3)または1-アセチル-2,3-ジヒドロ-2,2´-ビスインドール(4)を選択的に得る、独創的な1工程反応をも、昨年開拓し、2,3を原料として、6-シアノ-5-メトキシ-12-メチルインドロ[2,3-a]カルバゾール(5)に対する簡便な3ルートによる短工程全合成法を報告した。これらの知見を基礎として、本年度は、4を原料とする研究を行い、5に応用できる第4、第5の合成ルート,の開拓に成功した。またその合成過程で、分子内の二つの窒素原子を識別して官能基化する方法を編み出し、5の各種誘導体合成の可能性を開いた。さらに、新規な6-アミノインドロ[2,3-a]チアゾロ[5,4-c]カルバゾール(6)化合物群の合成にも成功し、抗ガン、抗ウイルス作用等を有する新規なインドロ[2,3-a]カルバゾール化合物群を志向した合成研究が当初の目的どおりに進行している。 また、1-ヒドロキシメラトニンを酸で処理すると、3a,3a´-ビスピロロ[2,3-b]インドール骨格を1工程で形成するという画期的な反応を、1-ヒドロキシインドール仮説に基づき発見した。本反応により、これまで良い合成法のなかったフォリカンチンやキモナンチンアルカロイドの簡単な合成が可能になると考えられ、その実現に向けて展開中である。尚、本研究の成果は、国内国外を問わず多数利用されているが、フェアーに我々を引用する研究者が少ないことに驚いている。
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