研究概要 |
本研究で酸塩基複合体形成を基盤とする分子と分子の相互作用による活性化を基本概念として設定し、活性化と立体化学制御機能を持つ分子の設計を基盤とした触媒的不斉反応の開拓を直接の目的とする。本研究により以下の成果をあげることができた。 1.リチウムエーテルアミド存在下エステルエノラートとイミンとの反応ではβラクタムを最高96%収率74%ee、またα,β-不飽和エステルとの反応では付加体を最高67%収率92%eeで得ることに成功した。 2.触媒量のキラルアミドホスフィンとCu(OTf)_2存在下4,4-ジメチルシクロヘキセノンにジエチル亜鉛を作用させると共役エチル化体が最高64%eeで得られることが明らかになった。さらに、この銅-ジエチル亜鉛の反応系をイミンへの付加反応へ適用したところ、最高97%収率94%eeでエチル付加体を得ることに成功した。また、アミドホスフィン配位子がロジウム触媒によるアリールホウ酸のエノンへの共役付加反応に有効であり、最高99%収率96%eeで付加体が得られることを見いだした。このアミドホスフィン配位子-ロジウム錯体の構造解析研究から、キラルアミドホスフィン配位子が触媒サイクルの中、必要に応じて二座配位と単座配位を切り替える能力を有するヘミレイバル配位子であること示す知見が得られている。 3.不飽和エステルに対するリチオ化チオフェノールの高選択的付加反応を契機とするα位不斉プロトン化反応を確立し、β位には不斉点が構築されないエステルを基質にした場合でも最高92%eeの非常に高い選択性でα位を不斉プロトン化することに成功した。さらに、リチオ化チオフェノールを分子内にホルミル基を有するキラルな不飽和エステルと反応させ、良好なジアステレオ選択性にて環化体を得ることに成功した。得られた環化体から生理活性天然物(-)-Neplanocin Aの効率的合成を達成した。
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