研究概要 |
創薬を志向した新規活性型超原子価ヨウ素化合物を用いる有機合成反応の新展開とその応用を目指して研究計画に基づき、今年度は先に開発した超原子価ヨウ素試薬を用いるいくつかの基盤反応を組み合わせることにより強力な抗腫瘍活性を有する含硫黄海洋アルカロイドmakaluvamineFの最初の全合成を達成することができた(Chem.Commun.,1999;Synthesis,1999.)。また、超原子価ヨウ素試薬であるphenyliodine(III)bis(trifluoroacetate)(PIFA)を用いて多くの生物活性化合物の重要な母核の1つであるインドール骨格の短工程合成に成功した(Heterocycles,1999.)。一方、創薬研究においては生物活性物質の立体選択的合成が重要な課題の1つである。我々は昨年度、報告したミセル反応場での低活性超原子価ヨウ素試薬の活性化の不斉合成反応への展開を目指して検討した結果、カチオン性界面活性剤であるcetyltrimethylammonium bromide(CTAB)により形成される逆相ミセル系に触媒量のジアシル酒石酸を添加するだけで比較的良好な光学収率でスルフィド類からスルホキシド類への触媒的不斉酸化反応が進行することを見出した(J.Org.Chem.,1999)。これまで超原子価ヨウ素試薬を用いる不斉酸化反応に関しては当量以上の不斉源が必要であると共に光学収率も極めて低かったことから今回見出した方法は今後、超原子価ヨウ素試薬を用いる様々な反応の不斉化において有望な手法となりうることが期待される。今後は本研究で開発した基盤反応と立体制御法を利用して更なる創薬研究を展開する予定である。
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