研究概要 |
超効率不斉制御能を持つ三環性2-オキサゾリドンや2-イミダゾリドン系不斉補助剤の簡易大量合成法を触媒的手法を用いて確立すると共に、それらの開環により得られる二環性2-アミノアルコールや1、2-ジアミン類を不斉配位子とする優れた不斉反応系を多岐にわたり確立し、その応用をはかる事を目的とした。 1. 複素環系不斉補助剤の大量合成に向けた触媒的プロセスの開発: (a) メソ型2-イミダゾリジノン体の不斉分割: 立体配座固定の光学活性二環性アミノアルコールのLi塩を環状アミン・LiF存在下メソ型N,N′-ジアセチルイミダゾリジノン体と反応させると、光学活性なモノアセチル体が一段階で効率良く得られた。これらは再結晶により容易に光学純度100%の不斉補助剤に変換できた。本不斉モノ脱アセチル化はオキサザボロリジンを不斉触媒とするボラン還元により効率良く達成できることを明らかにし、簡易大量合成への道を開いた。 (b) 2-オキサゾリドン体及び2-イミダゾリドン体の速度論的分割: 本触媒的手法を速度論的光学分割に応用した。即ち、光学活性二環性アミノアルコールより誘導したキラルなオキサザボロリジンを触媒量用い、dl-N-アセチル-2-オキサゾリドン体またはdl-N,N'-ジアセチル-2-イミダゾリドン体をジボラン処理したところ、還元的不斉脱アセチル化が進行し、何れも高い不斉収率と化学収率で速度論的光学分割が達成された。本手法は、オキサゾリジノン系及びイミダゾリジノン系不斉補助剤の大量合成のみならず、光学活性1,2-アミノアルコールやジアミン類の効率キラル合成への応用展開が期待できる。 2. 双環不斉アミノアルコール類の触媒的利用: 立体障害の大きい光学活性二環性アミノアルコール体より誘導したC2-対称性ビスオキサゾリンを不斉配位子とした新規ルイス酸を利用し、不斉アルドール反応を検討した。その結果、高い不斉誘起が認められ、しかも、オキサゾリン環間のスペーサー長によりそのエナンチオ選択性が逆転するという、これまでにない興味深い知見が得られた。
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