研究概要 |
正常細胞に比べ癌細胞に対して選択的に細胞致死活性を示す天然物没食子酸とヒガンバナアルカロイドの作用機序を検討した。没食子酸が誘導するHL-60RG細胞のアポトーシスにおいて、細胞内にいくつかのタンパク質の増加が観察された。そのうちの3つはFK506 binding protein 12(FKBP12),peptidy-prolyl cis-transisomerase(Pin-1),histone H3であると同定した。FKBP-12とPin-1はRT-PCR法によりmRNAレベルの上昇が観察され、没食子酸処理後に新たに合成されることが示唆された。これらのタンパク質と活性酸素種、細胞内カルシウムの没食子酸が誘導する細胞死への関与を検討したところ、没食子酸が誘導するアポトーシスにおいて、初めに活性酸素が産生され、続いて細胞内カルシウムの上昇し、FKBP-12,Pin-1,Histone H3が増加することが明らかになった。また、没食子酸はカスパーゼ3を活性化することを見出したが、上記3種のタンパク質にはカスパーゼが認識するアミノ酸配列が存在せず、これらタンパク質はカスパーゼとは独立した系で働いていることが示唆された。Zephyranthes carinataから新規アルカロイドとして1-(3-hydroxybutylyl)pancratistatin(HBP)と1-((S)-(+)-3-beta-D-glucopyranosyloxybytylyl)pancratistatin(GBP)を単離した。これらの化合物は癌細胞に対して選択的細胞致死活性を示し、その作用機序をフローサイトメーターを用いて検討したところ、細胞の増殖をGBPは細胞周期のG0/G1期とG2/M期で止めること、また、HBPは細胞周期のG0/G1期、S期、G2/M期で止めることが明らかとなった。今後さらに詳細な検討が望まれる。
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