研究概要 |
1. 大腸菌で発現させたpharaonis phoborhodopsin(ファラオニスフォボロドプシン)の精製法の検討.すでに我々は大腸菌での発現系を完成させていたが,今回安定して多量に発現するように培養条件の検討を行った.現在,10lの培養から10mgのppRが分離でき,カラム操作1回で,A280/A500が約2の試料を取れるようになった.この試料の光学的性質は,N.Pharaonisから分離精製した試料と同じ現象が見られた.大腸菌の膜にロドプシン様タンパクが発現した最初の例である. 2.PpRのM中間体の崩壊は遅い(時定数0.65 s-1 pH 7.0)が100.mMアジドの添加で約300倍に加速された.また崩壊の速度定数の温度変化から,速度の加速は活性化エネルギーおよび活性化エントロピーの低下によることが明らかになった 3. ppRの吸収波長の制御の検討.バクテリアのロドプシン様タンパクは4種類が存在する.それらのアミノ酸の一次構造の相同性は高いものの,吸収波長はppR(pR,フォボロドプシン)のみが,他のものより約100nm短波長にある.この原因を探るべく,種々の変異体をつくり,その吸収波長を測定した.1つの残基の変化で大きな波長シフトはおこらず,色々な残基からの寄与が合わさったものであると推定された. 4. 分子動力学によるppRの構造推定.BRを鋳型にして,分子動力学によりppRの構造を推定した. 5. M中間体の崩壊はなぜ遅いか.M中間体は,レチナールシッフ塩基が脱プロトン化しており,M中間体の崩壊はこのプロトン化である.このプロトンを与えることが出来ると思われる残基をもつ変異体を作製した.この変異体は確かにMの崩壊が早くなった.
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