生体高分子のX線構造解析の重要で困難な過程は結晶化で、とりわけ核酸および核酸・タンパク質複合体の場合には大きなキーポイントである。この困難を打破するために、「Crystallizability」の概念が提唱されている。核酸では、タンパク質よりは機能発現に関連しない部位の塩基配列に任意性があることより、この部位の配列、鎖長が種々のものを合成、作成する。さらに溶液中の凝集状態をモニターし、均一な溶液状態に誘導することで、結晶化効率を上げることが行われている。我々もこの2つの方法を修得・取り入れた。機能性核酸分子として、通常の塩基対形成を採らない塩基配列をもった核酸を合成した。多くは横浜国立大学工学部上杉博士らにお願いしているが、一部は注文合成で手に入れて結晶化を行っている。凝集モニターは備品として購入し、結晶化の条件検討に供している。リボザイム以外にもインフルエンザ予防薬開発の可能性を考え、このウィルスタンパク質を認識する核酸アプタマー分子も取上げて研究を行っている。1998年秋に2つの機能性核酸のX線構造解析が報告され、その座標を手に入れることが出来た(デルタ型リボザイムとグループIイントロン)。この機能性核酸の構造基盤の研究として、我々が開発したプログラムを使って、座標より各種構造パラメータを算出・整理し、その相関解析を行った。この結果は、核酸化学シンポジュウムにて報告する。また、この結果を踏まえた塩基配列をもった結晶化する核酸分子を設計している。
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