1)塩基除去DNA修復酵素群の基質認識と修復機構の構造基盤 大腸菌AlkA(3-methyladenine-DNA glycosylase II)とDNAとの複合体モデルを、関連酵素のX線結晶構造と変異実験結果から構築した。我々の解析したDNAなしの酵素構造から、基質DNAがクサビ状に曲がる様式で結合させることが出来る。また、損傷塩基を二重らせん構造からフリップアウトさせている。この折れ曲がり構造認識には蛋白質のhelix-pairpin-helixモチーフおよびクサビ構造にはロイシン125が重要である。損傷塩基の基質認識は、一連の芳香環がつくるポケットでなされており、アルキル化によって正に帯電した塩基とのπ-cation相互作用で行われているモデルを提唱した。 (2)DNA修復系酵素MutTのタンパク質構造解析および構造活性相関に関する考察 129アミノ酸からなるMutTタンパク質は、ヌクレオシド三リン酸をヌクレオシドーリン酸に加水分解する酵素で、ヌクレオチドプール内に存在する変異ヌクレオチド、8-oxo-dGTPを分解除去する。 このMutTのX線タンパク質構造解析に着手した。解析に用いた結晶は、分解能は2.20Åで、回折データは解析を行う上で良好であると判断した。X線解析の位相決定法としては、NMR構造を初期構造とする分子置換法を行っている。8-oxoGを中心とした変異、反応機構について、主に分子表面の静電ポテンシャルに着目した構造活性相関に関する考察を行った。この酵素には明確な結合ポケットは存在せず、βシート領域の上に基質が張り付くような状態で結合し、Leu4、Ile6、Ile80、Leu82と疎水性相互作用により捕獲されると考えられる。また、金属カチオンが酵素基質複合体の形成に重要な役割を果たしているモデルを考えている。
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