海洋生物より単離された生理活性物質の薬理学的研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10470479
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 大泉 康 東北大学, 薬学部, 教授 (00006355)
• 研究分担者: 中谷 圭吾 東北大学, 薬学部, 教務職員 (60281979) ; 松永 公浩 東北大学, 薬学部, 助手 (90222306) ; 中畑 則道 東北大学, 薬学部, 助教授 (60045804)
• キーワード: 生理活性物質 / 9-methyl-7-bromoeudistomin D / zooxznthellatoxin B / goniodomin A / ミオシン / 筋小胞体 / アストロサイトーマ細胞 / 骨格筋

研究概要

極めて強い生理活性物質を有する海洋動物は少なくとも数千種にも及ぶと考えられているが、薬理学的な研究はほとんど行われていないと言っても過言ではない。我々は約10年前から、海洋生物由来の生理活性物質に関する薬理学的、生化学的、化学的研究に着手してきた。その結果、新規な化学構造やユニークな生物活性を有する化合物が見出され、これらの中にはイオンチャネルを研究するための薬理試薬として注目されるものが少なからず発見され、それらは生理機構の解明に応用され学問の進歩に貢献した。本研究では、まずスクリーニングにより海藻より血管収縮作用を持つ新しい生理活性物質であるzooxanthellatoxin-Bを見出した。次に以前筋小胞体からCa^<2+>を遊離させる作用を持つことを報告した9-Methyl-7-bromoeudistomin Dおよびその誘導体によるCa^<2+>遊離作用のメカニズムを詳細に解析し、さらには収縮蛋白質に対する新たな作用も見出した。また収縮蛋白質を直接活性化させる生理活性物質としてはこのほかにもスクリーニングによって新たにcudistomin Mを見出した。一方、以前に筋収縮増大作用を示したgoniodomin Aについては、新たにその作用に組織特異性があることを見出し、その作用機序の解明に大きく前進するとともに、将来的には組織特異的な用法が可能であることも示唆された。さらに、ヒトアストロサイトーマ由来の細胞株に対し、goniodomin Aは細胞死を引き起こし、この化合物が抗癌作用を持つ可能性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Seino-Umeda,A.et al: "9-Methyl-7-bromoeudistomin D induces remarkablely Ca^<2+> release from cardiac sarcoplasmic reticulum." European Journal of Pharmacology. 357. 261-265 (1998)
• [文献書誌] Moriya,T.et al: "Vasoconstriction induced by zooxanthellatoxin-B,a polyoxygenated long chain product from marine alga." European Journal of Pharmacology. 350. 59-65 (1998)
• [文献書誌] Mizuno,K.et al: "Goinodomin A,an antifungal polyether macrolide,increases filamentous-actin content in 1321N1 human astrocytoma cells." Journal of Pharmacy and Pharmacology. 50. 645-648 (1998)
• [文献書誌] Yasuda,M.et al: "Modulation of actomyosin ATPase by goniodomin A differs in types of cardiac myosin." European Journal of Pharmacology. 346. 119-123 (1998)
• [文献書誌] Ohizumi,Y.et al: "Potent stimulation of myofilament force and ATPase activity of skeletal muscle by eudistomin M,a novel Ca^<2+> -sensitizing agent from a Caribbean tunicate." Journal of Pharmacology Experimental Therapeutics. 285. 695-699 (1998)
• [文献書誌] Ohizumi,Y.et al: "The powerful sitimulatory action of 6-Ο-acetyl-9-methyl-7-bromoeudistomin D on contractile protein system of rabbit skeletal muscle." Japanese Journal of Pharmacology. 76. 113-116 (1998)