現在までに哺乳類ホスホリパーゼD(PLD)としてPLD1とPLD2がクローニングされており、PLD1にはPLD1aとPLD1bのスプライシングバリアントが存在する。これらのPLDのうち、PLD1(PLD1aとPLD1b)はin vitroで低分子量G蛋白質のRhoAとADPリボシル化因子(ARF)、およびプロテインキナーゼCα(PKCα)により活性化されることが明らかにされている。さらに、これら因子の効果は相乗的であることより、それぞれの因子はPLD1の異なる部位に直接結合して活性化効果を示すと考えられているが、PLD1の結合部位は解明されるに至っていない。そこで、これらの因子に対するPLD1の結合部位を検索し、以下の成果が得られた。 酵母two-hybridsystemにおいて、PLD1a(全長1074アミノ酸)の各種断片と活性化因子ARF、RhoA、およびPKCαとの相互作用を検討した結果、PLD1aのC末端部分712-1074アミノ酸残基PLD断片(D4ペプチド)が活性型RhoA(RhoAval14)と特異的に相互作用したが、その他の活性化因子についてはポジティブな結果は得られなかった。D4ペプチドとRhoAval14との相互作用は、in vitroおよびin vivo(COS-7細胞内)でも確認できた。また、このペプチドは、in vitroにおいてARFやPKCαによるPLD1αの活性化には影響を与えなかったが、RhoAにより活性化されるPLD1aを特異的に阻害した。以上の結果より、RhoAはPLD1aのC末端領域に結合し、ARFとPKCaはPLD1αのその他の領域に結合してPLD1a活性を調節するものと結論づけられる。
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