研究概要 |
FGF(fibroblast growth factor)はペプチド性の細胞間シグナル分子で,その構造上の類似性から,FGF-1〜FGF-9の9種類が見い出されていた。FGFファミリーのうち,aFGF,bFGF以外の7種類のFGFは別の研究目的で単離されたもので,その構造上の類似性からFGFファミリーに分類されている。しかし,申請者らは新規なFGFを単離する目的で,その構造上の類似性を指標にして,簡便に遺伝子検索ができる手法を独自に開発し,遺伝子検索を行い,6種類の新規なFGF関連遺伝子を単離した。これらの新規なFGFの発現を調べたところ,FGF-10とFGF-16が,それぞれ,白色脂肪組織と褐色脂肪組織に特異的に発現していることを明らかにした。 本研究では,これらのFGFの脂肪組織における発現の発達段階特異性を調べたところ,FGF-10は生後とともに発現量が増大し,成熟とともに発現量が一定になることを明らかにした。一方,FGF-16は胎児に高発現し,出生後,その発現が急速に低下することを明らかにした。さらに,FGF-10とFGF-16を大腸菌で発現させ,その生物活性を白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の初代培養系で調べたところ,FGF-10は白色脂肪細胞に,FGF-16は褐色脂肪細胞に対して細胞増殖活性をもつことが明らかになった。従って,FGF-10は主として,生後の白色脂肪組織の増大に,FGF-16は胎児期における褐色脂肪組織の増大に関与していることを明らかにした。
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