研究概要 |
FGF-10の成体における発現を調べたところ,白色脂肪組織で高発現していた。さらに,白色脂肪組織を成熟脂肪細胞と前駆脂肪細胞に,遠心分離法で分画して,FGF-10の発現を調べたところ,FGF-10は前駆脂肪細胞に特異的に高発現していた。さらに,前駆脂肪細胞の初代培養系を用いて,前駆脂肪細胞の分化過程におけるFGF-10の発現量の変化を調べた。前駆脂肪細胞は分化誘導開始後,2日目から,分化誘導の master regulatorであるPPARγを発現し,成熟脂肪細胞に分化していく。一方,FGF-10の発現は分化誘導開始1日目から見られ,PPARγが誘導される2日目には,その発現が低下した。さらに,前駆脂肪細胞の初代培養系で,FGF-10の生物活性を調べたところ,FGF-10は前駆脂肪細胞に対して増殖活性を示したが,分化誘導には影響を示さなかった。これらのことは,FGF-10は前駆脂肪細胞に対する増殖因子として,白色脂肪組織の形成に関与しているとことを示唆している。 FGF-10の白色脂肪組織の形成における役割を明らかにするため,我々はFGF-10ノックアウトマウスを作成し,その表現形質を解析した。FGF-10ノックアウトマウスは胎生致死ではなかったが,出生直後に死亡した。FGF-10ノックアウトマウスは四肢と肺が完全に欠損していた。出生直後のFGF-10ノックアウトマウスと正常マウスの皮下組織をOil Redで染色し,白色脂肪組織を調べた。正常マウスでは,皮下の白色脂肪組織が形成され,脂肪細胞には脂肪滴の蓄積が見られた。一方,FGF-10ノックアウトマウスの皮下組織の脂肪組織は未発達で,脂肪滴の蓄積は見られなかった。これらの結果より,FGF-10は白色脂肪組織形成に重要な役割を果していることが明らかになった。
|