プロスタグランジンEP3受容体は、低分子量G蛋白質Rhoを介し、エフェクターRhoキナーゼを活性化して神経突起の退縮を引き起こす。このEP3受容体どの様な三量体G蛋白質を介して突起退縮を引き起こすかを解析した。まず、様々な三量体G蛋白質のαサブユニットの活性化体を作成し、突起退縮作用を調べると、Gα12、Gα13、Gαqの3種類のG蛋白質がRhoを活性化して突起退縮を引き起こした。それぞれのRho活性化経路を調べると、Gα13による突起退縮はチロシンキナーゼ阻害剤のtyrphostin A25で抑制されたが、Gα12は全く影響されず、GαqはCキナーゼの阻害剤で抑制された。このことは、3種類のG蛋白質によるRho活性化経路は全く異なることを意味する。次ぎに、ET3受容体がどの三量体G蛋白質に共役し、神経突起の退縮を引き起こすのかを調べた。EP3受容体による突起退縮は、Cキナーゼの阻害剤では全く影響を受けないが、tyrphostin A25で完全に抑制された。このことから、EP3受容体はG13に共役し、神経突起を退縮させることが明らかとなった。一方、活性型Rho、RhoA-V14による神経突起の退縮は、tyrphostin A25では全く阻害されなかったが、別のチロシンキナーゼ阻害剤のgenisteinで抑制された。しかし、Rhoキナーゼによる突起退縮は阻害されなかった。よって、Rhoによる神経突起の退縮には、その上流と下流にそれぞれ異なるチロシンキナーゼが関与していることが推察される。
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