研究概要 |
本研究の目的は,テロメラーゼ酵素コンポーネントが明らかになりつつあることを踏まえて,すでに得られている触媒コンポーネント(hTERT)の機能を明らかにするとともに,特にヒト正常細抱の有限分裂寿命・不死化にかかわるテロメア・テロメラーゼの機能・役割を明らかにすることである。具体的には,ヒトテロメラーゼサブユニットcDNAの導入により,正常細胞におけるテロメラーゼ活性発現と,細胞分裂寿命延長および不死化への機能を調べる。この研究の一つの応用として,酵素活性を高発現する細胞株を樹立して,テロメラーゼ阻害剤のスクリーニング法を開発することも計画する。本年度の研究により,以下の様な成果が得られた。1)選択薬剤と共発現させるために,IRESベクターにつないだhTERTの構築に成功した。2)ヒト正常線維芽細胞にhTERT遺伝子のcDNAを導入し,一時的な発現によるテロメラーゼ活性の有無を測定したところ,高い活性が発現していることがわかった。 3)cDNAを導入された細胞を薬剤耐性によって選択しクローニングしたところ,大部分がテロメラーゼ活性陽性になっていた。4)導入された線推芽細胞は、テロメア配列が著しく延長していることがわかった。5)導入された線推芽細胞は、正常のものに比べて分裂寿命が延長することがわかった。6)導入された線維芽細胞はすべて分裂寿命を迎え,不死化するものはまったく得られなかった。7)分裂寿命の最後まで,テロメラーゼ活性は陽性でテロメアは長いまま保たれていることがわかった。以上の結果から,従来予想されていたような,テロメラーゼが発現すれば細胞は不死化するという単純な機構ではないことが明らかになった。次年度は,この機構にさらに迫ると共に,テロメラーゼ活性を高発現する細胞を得ることにする。
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