アレルギー疾患の発症と抑制に関する基礎的研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10470486
• 研究機関: 岐阜薬科大学
• 研究代表者: 永井 博弌 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (90082974)
• キーワード: アレルギー / 気管支喘息 / 気道過敏症 / 好酸球 / プロスタグランジン / IgE / IL-5 / IL-4

研究概要

本年度は、マウスにおけるアレルギー性気管支喘息モデルを用いて、プロスタノイドおよびCD40の意義を検討した。プロスタノイドの意義は、プロスタグランジンE_2(EP_1,EP_4)、プロスタグランジンD_2(DP)、プロスタグランジンI_2(IP)およびトロンボキサンA_2(TP)受容体の欠損マウスを用いて検討した。このほか、5-リポキシゲナーゼ(5-LPO)の欠損マウスおよびCD40欠損マウスを用いて、それぞれの意義を検討した。その結果、CD40欠損マウスでは明らかにIgE産生やIgG産生抑制などの免疫系の不全が見られ、好酸球増多やIL-5産生など、炎症系の活性化の低下および平滑筋の気道過敏性の低下が見られた。さらにDP欠損マウスでは、IgE産生などの免疫系に影響は見られなかったが、好酸球増多および気道過敏性の発症は見られず、DPの炎症反応における意義が明かとなった。さらに、TPおよび5-LPO欠損マウスでは、免疫系、炎症系のパラメータへの影響は見られないものの、気道過敏症は発症せず、これらは平滑筋レベルでの重要な因子であることが示された。またEP欠損マウスでは、免疫系、炎症系および平滑筋のいずれにも影響が見られず、EP_2およびEP_3についての検討が必要であるものと思われた。またIP欠損マウスでは、炎症系および免疫系の増悪が観察された。これらの知見から、今後気管支喘息治療薬としてのDP拮抗薬、PGI_2誘導体およびCD40抑制薬の応用が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Inagaki,N.,Nagai,H.et al.: "Participation of histamine H_1 and H_2 receptors in passive cutaneous anaphylaxis-induced scratching behavior in ICR mice."Eur.J.Pharmacol.. 397. 361-371 (1999)
• [文献書誌] Kawakami,Y.,Nagai,H.et al.: "Terreic acid,a quinone epoxide inhibitor of Bruton's tyrosine kinase"Proc.Natl.Acad.Sci.. 96. 2227-2232 (1999)
• [文献書誌] Kimata,M.,Nagai,H.et al.: "Ca^<2+> and protein kinase C signaling for histamine and sulfidoleukotrienes released from human cultured mast cells"Biochem.Biophyls Res. Commun.. 80. 859-900 (1999)
• [文献書誌] Shichijo,M.,Nagai,H.et al.: "Role of cvclic3'.5'-adenosine monophosphate in the regulation of chemical mediator release and cytokine production from cultured human mast cells"J.Allergy Clin.Immunol.. 103. 421-428 (1999)
• [文献書誌] Takizawa,T.,Nagai,H.et al.: "Effect of a new antiallergic agent,VUF-K-8788,on experimental asthmatic reactions in guinea pigs"Pharmacology. 59. 127-134 (1999)
• [文献書誌] Nagai,H.,Ueda,Y.et al.: "Different role of IL-4 in the onset of hapten-induced contact hyersensitivity in BALB/c and C57BL/6 mice"Brt.J.Pharmacol.. 129. 299-306 (2000)