研究概要 |
ホスト-ゲスト分子認識による生体膜機能の人工制御を目指した分子設計と合成に関する研究として,ドーパミン及びカテコール類との錯体形成に基づく膜電位変化、並びにシクロデキストリン誘導体によるチャネル形成能に関して,以下のような基礎知見が得られた。 (1) PVC担持液膜の感応素子として,カリックス[6]アレーン酢酸エステル誘導体(1)の類縁体であるホモオキサカリックス[3]アレーントリエーテル誘導体(2)を用いたところ,2は1の高いドーパミン選択性(vsアドレナリン,ノルアドレナリン)を保った上で,極めて高いドーパミン/K^+選択性を示すことが明らかとなり,生理的条件下でドーパミン選択的な感応素子として利用可能であることが示された。 (2) 種々の脂溶性四級アンモニウム塩(Q^+X^-)または脂溶性アミンを含むPVC担持液膜において,各種中性型フェノール類(ArOH)に対して,酸性度及び脂溶性を反映した選択的なアニオン性膜電位応答が観測された。電荷を持たない中性種により膜電位変化が生起されるメカニズムとして,抽出されたArOHとQ^+X^-との錯体形成,並びにそれに続くH^+の解離と生成するHXの水相への放出の結果,膜界面で電荷分離状態にあるQ^+X^-の量が減少し,アニオン性の膜電位変化が生起されるという応答機構が支持された。 (3) 全ての一級OHを選択的に長鎖アルキルアミドに置換したα-及びβ-シクロデキストリン誘導体を合成し,それらを平面脂質二分子膜(diphytanoylphosphatidylcholine)に埋め込み,両側の水溶液に印加電圧(〜200mV)を加えたところ,長寿命(〜数s)の単一チャネル電流が開閉挙動を伴う矩形波として観測され,脂質二分子膜の両層中の半チャネル分子の縦会合による安定な膜貫通チャネル構造の形成が示された。
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