in vivo遺伝子治療は難治性疾患に対する先端的医療として現在注目を集めているが、その実現においてはターゲット選択的でかつ効率のよい遺伝子ベクターの開発が不可欠となっている。本研究では、申請者らが既に基本技術を確立している送達機構および送達点(細胞、細胞内器官)が異なる肝臓ターゲティング法をプロトタイプとして、プラスミドDNAの体内動態と遺伝子発現の関係を定量的に解析し、さらに得られた情報に基づき、遺伝子の総合的な動態制御を可能とする高分子及び脂質キャリヤー分子の合理的設計理論を構築した。まず遺伝子を肝臓へ選択的に送達させる方法として、糖修飾したカチオン性リポソームおよび高分子を開発した。培養細胞を用いたin vitro実験の結果、これらのキャリアーとプラスミドDNAとの複合体は糖認識機構を介して効率良く取りこまれ、コードした遺伝子を発現することが示された。in vivoへの応用を目的に体内動態および遺伝子発現について検討したところ、糖修飾した複合体については門脈内投与後ほとんどが肝臓へ蓄積し高い遺伝子発現が認められた。また、体内動態のみならず細胞内での動態を制御するために、糖修飾カチオン性ポリアミノ酸に対してさらに膜融合ペプチドを導入した多機能性遺伝子キャリアーを開発した。このキャリアーとプラスミドDNAとの複合体に関しては、静脈内投与であっても、肝臓選択的でかつ極めて高い遺伝子発現が得られ、これまでのキャリアーと比べ非常に優れた機能を有することが明らかになった。以上の研究を通じて、遺伝子の体内動態を制御することによって遺伝子導入を大幅に改善できることを証明し、肝疾患を始めとする各種疾患に対する遺伝子治療の基盤が確立された。
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