亜鉛フィンガー型DNA結合モチーフは、その繰り返し構造ゆえに約3塩基ずつ認識するモジュールの連結体として見ることができ、この単純な構図は従来のDNA結合モチーフにはない特徴であり、新たに塩基配列を認識する分子の合理的設計に大きな道を開いている。N-末端側にDNA切断機能を有するトリペプチドGGHを導入した人工亜鉛フィンガーペプチドは、天然制限酵素の認識よりも長い塩基を認識する人工制限酵素として有望である。長鎖(20〜30塩基対)DNA認識にはCys_2His_2型亜鉛フィンガーモチーフを6つあるいは9つ導入した新規ペプチドの設計が可能であり、実際、このような人工亜鉛フィンガーペプチドは連続する18および27塩基対のDNA配列に結合することが明確に示された。TEIIIAやGLIはそれぞれ9および5個の亜鉛フィンガーモチーフを有しているが、DNA認識においては、すべての亜鉛フィンガーが等しく機能しているわけでなく、限られた亜鉛フィンガーのみが使用されている。それ故、30塩基部位にも及ぶ広い領域を認識できる亜鉛フィンガータンパク質の創製は極めて興味深いことである。この結果は、新規亜鉛フィンガータンパク質が任意の長さの連続する非対称DNA配列に選択的に結合できることを示唆している。また、DNA湾曲と転写との関連から、DNA湾曲を制御できる人工亜鉛フィンガーペプチドが創製されたが、これは特定の遺伝子の転写・発現の新しい制御分子として興味深い、さらに、亜鉛以外の金属をもつDNA/RNA認識フィンガーも創製されたが、これも基礎的・応用的に価値がある。ヒト・ゲノム計画の進展とともに、このような分子は遺伝子機能の制御分子としての展開が期待される。
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