特定のアグリゲーション構造がリガンドとの結合に関与することが明らかになったが、これらの分子についてその構造を明らかにするため分子の結晶化を試みた。しかし、アグリゲーションが多種の分子集合体から構成されているためか、現時点で解析するための結晶が得られていない。 細胞質ドメイン配列を有するペプチドについて、その溶液中における構造をモノマーとトリマーで比較したが、大きな違いは見られなかった。そこで、このドメイン配列のモノマーを樹脂に結合させたアフィニティカラムを作製し、このドメインと相互作用する分子の探求を行った。マクロファージの多く含まれる臓器(肺)より細胞抽出液を調製し、このカラムと特異的に相互作用する分子の精製を試み、SDS-ゲル電気泳動において6種のタンパク質を検出した。これら因子の部分アミノ酸配列を決定した結果、1つが未知のタンパク質であったが、他の5種類は既知のタンパク質であった。それらは、HSP70、HSP90、Aminopeputidase、S-Adenosylhomocysteinase、Glyceraldehyde3-phosphate dehydrogenaseと同定できた。 次に、これらの因子が単独で結合しているのか、複合体を形成して結合しているのかを確かめるために、それぞれの因子の単離を試みた。それぞれの因子の遺伝子の大腸菌での発現を試み、HSP90、Glyceraldehyde3-phosphate dehydrogenaseについては因子を単離でき、これらの単独での細胞質ドメインへの結合活性を調べたところ、Glyceraldehyde3-phosphate dehydrogenaseは結合しなかったが、HSP90の場合は結合が認められた。近年、HSP90は種々のシグナル伝達に関与していることが明らかにされていることから、マクロファージに種々のリガンドを加えたときに生じる応答について、これらがスカベンジャー受容体-HSP90を介する経路であるか否かについて検討を行っている。
|