マクロファージスカベンジャー受容体のリガンド結合ドメインのモデル分子を作製し、この分子と核酸分子との相互作用について詳細な検討を行った結果、受容体との結合に関与するのはアグリゲート化した高分子種であり、4本鎖構造をとる配列であってもモノマー分子では結合しないことが判明した。またアポリポタンパク質B-100との相互作用についても検討した結果、この中のある配列(ペプチド分子を作製して検証)がアセチル化やアクロレインによる修飾で、結合を阻害するようになることが判明した。このペプチド分子についてX線回折を行ったところ、アミロイドタンパク質に見られる4.8オングストローム付近の回折像が得られた。以上より、マクロファージスカベンジャー受容体は、リガンドとして陰性荷電を有する高分子で、クロスβ構造のような特定のアグリゲート化した構造体を認識することが明らかになった。 次に細胞質ドメインについて、この配列を有するペプチド分子の作製を行った。この分子を用いて、このドメインと相互作用する分子の探求を行ったところ、HSP70、HSP90、Aminopeputidase、S-Adenosylhomocysteinase、Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)が同定できた。この内、HSP70、HSP90、GAPDHについて、さらに解析を行い、GSTプルダウンアッセイ、および免疫沈降実験によりこれらはいずれも受容体と相互作用することが明らかとなった。 スカベンジャー受容体を介するシグナル伝達について調べ、フコイダンに依るNO産生がスカベンジャー受容体により誘導されている可能性が示唆された。また、スカベンジャー受容体の細胞質ドメインのリン酸化について調べた結果、N末端より16番目のセリンがリン酸化を受けることが判明した。
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