研究概要 |
量子システム分析法の根底を成すものは,量子力学でいうところのハミルトニアンである.一般にはハミルトニアンは微分演算子の形式で表現される.このために本年度は微分演算子にファジー的な方法を組み込むことをおこなった.これは,微分方程式の係数をファジー数と見なすことにより達成された.このようにして作られたファジーハミルトニアンは,外部からの擾乱にたいして安定性を発揮し推計結果の収束性に向上が認められた.さらに量子システム分析法の別の表現方法に対する研究をおこなった.これは,ラグラジアンから作用積分を定義し伝播関数を直接的に計算する方法である.これにより,システム構成図の中で重要な経路が自動的に選び出されるだけでなく,構成図から確率量を直接計算できる可能性が開けた.第3番目の方法として,実際に日本の出生力の低下の問題を扱った.主成分分析と重回帰分析により,以下のことが知れた. 1)合計特殊出生率は,主に乳児死亡率,未婚率,そしてGDPから大きな響を受ける.なかでも,乳児死亡率は低値にあり,これ以上の改善はのぞめない. また,未婚率の増加は,個々人の嗜好や主観的な価値に基づく理由が多く,有配偶率を高めることは困難である.そこで,攻策変数となり得るのは,GDPのみである. 2)社会生物学の方法と上記の計算結果を融合することにより,人口予測方程式を得た. これらの結果の報告を兼ねてシンポジュウムを開催した.
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