研究概要 |
本研究でおこなった実験は,以下の2点である. 1)in vivo において,AGT(アンジオテンシノーゲン)遺伝子のalleleによるmRNA発現量の差を検討する. 2)AGTコピー数の異なるマウスにおいて,塩分摂取などの環境要因とAGTコピー数の違いによる遺伝要因との交互作用を検討する. 1)ヒト臓器として心臓および肝臓を検討した.心臓組織は冠動脈バイパス形成術時,得られる右心耳組織を,肝臓組織は肝臓疾患診断を目的とした肝生検時の検査済み検体の残りを使用した.検体からtotal RNAを抽出後,RT-PCR法によりM235T多型領域のDNA断片を得た.これを鋳型とし,塩基置換部分を境にして,コモンプライマーと長さの異なるallele特異的プライマーをTaq DNA ligaseを使って解析した.その結果,心臓組織64例のうち,M235T多型のヘテロは11例あり,それぞれの235T alleleと235M alleleの発現比を測定したところ,1.00〜1.23といずれの検体でも235T alleleの発現が多く, in vitroと同様の結果となった.このことは,235Tのalleleからの発現量が小児期から多いことが,中年期以降の本態性高血圧発症の危険要因となっているという仮説を支持するものである.肝臓組織に関しては10例の検体で解析したが,ヘテロは1例のみであった. 2)マウスの繁殖が順調にすすみ,AGTコピー数が1,2,3,4のオスを数匹ずつ,塩分摂取の多いグループと通常食に分けた.血圧は,tail-cuff method測定した.マウスの開発者が報告しているように,AGTコピー数により,血圧の平均が上昇する事を確認した.しかし,塩分摂取による,血圧の有意な差異はいずれのコピー数の群でもみられなかった.
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