研究概要 |
本研究は、血液脳関門(BBB)に複数種類の基質を脳内から排出する輸送系が中枢組織選択的な解毒機構として働いているという仮説を証明することを目的とした。今年度の注目すべき発見は、BBBに胆汁酸を排出する輸送系が働き、血液中のタウロコール酸やコール酸などの胆汁酸の脳への移行性を顕著に制限していることを明らかにした点である。またこの輸送系は、バラアミノ馬尿酸を排出する輸送系とは異なることが明らかになった。さらに、胆汁分泌されるアニオン型環状ベプチド性薬剤BQ-123をモデルとして検討したところ、BBBから胆汁酸輸送系とは異なる担体輸送系で排出されることが明らかになった。一方、脳内ステロイドであるデヒドロエピアンドロステロンの硫酸抱合体(DHEAS)の脳内動態を解明することはBBBの解毒機構を解明する上で重要である。本研究によってDHEASがその構造類似体の硫酸抱合型エストロンと共通の担体輸送系で排出されることが明らかになった。病態時にBBBの輸送機能がどのように変化するかは、重要な課題であるが、BBBをin vitro及びin vivo系においてdiethylmaleate処理をしたところ、L-cystineを取り込みL-glutamic acidを排出するsystem Xc-が誘導されることを発見した。さらに、in vitro及びinvivoマウス実験系においてMultidrug resistance modulator (MDR)のPSC 833によって、P-糖蛋白(P-gp)を多く発現している直腸癌細胞(HCT-15)におけるvincristine(VCR)とvinblastine(VBL)の排出速度が顕著に低下することを明らかにした。この時、VCR,VBLの細胞内へのinflux速度にPSC 833は影響しないことが分かった。
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