本研究は、「血液脳関門(BBB)に複数種類の基質を運ぶ輸送系が中枢解毒機構として重要な役割を果たしている」という申請者の仮説を証明することを目的とした。血液脳関門には胆汁酸を脳から排出する輸送系が働いていることを明らかにした。この輸送系は既に、報告したパラアミノ馬尿酸の輸送系とは異なる。さらに、アニオン型の環状ペプチド性薬剤BQ123をモデル化合物として用いたところ胆汁酸の輸送系とは異なる輸送系が働いていることが明らかになった。さらに、血液脳関門のoatp2は、脳内ステロイドであるデヒドロエピアンドロステロンの硫酸抱合(DHEAS)を脳から循環血液中へ排出することが示された。また、解毒において重要な役割を果たすSH基の供給経路としてシスチンを取り込みグルタミン酸を排出するsystem Xc-は非常に重要である。酸化的ストレス下において血液脳関門でこの輸送系が誘導されることが示唆された。これまで、血液脳関門は神経伝達物質を脳内に保持する役割を果たしていると考えられてきた。これに対して本研究によって酸性アミノ酸を脳から循環血液方向へ排出する輸送系が存在することが明らかにすることができた。さらに、中枢解毒機構として脳脊髄液関門の果たす役割を評価する為に脳内ステロイドのエストロン送硫酸抱合体について解析したところ、これを積極的に脳脊髄液から排出する輸送系が働いていることが明らかになった。 このように本研究によって、1)神経伝達物費、2)脳内ステロイドの硫酸抱合体、3)胆汁酸、4)環状ペプチド性薬物、などを脳から排出するそれぞれ独立した輸送系が血液脳関門において働き、中枢解毒機構として重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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