研究概要 |
1.アレルギー性痒み因子の検索:皮膚炎と掻痒反応を自然発症したNC系マウスの掻痒反応をNOS阻害薬L-NAME(10mg/kg,i.v.)が顕著に抑制したが,NOS阻害活性のないD-NAME(10mg/kg,i.v.)は抑制しなかった。NC系マウスが掻痒反応を示し皮膚症状が悪化している吻側背部の皮膚内でNO濃度が有意に増加し,増加がL-NAME(10mg/kg,i.v.)の投与により速やかに正常レベルまで低下した。D-NAME(10mg/kg,i.v.)は,NO濃度を低下しなかった。NC系マウスが掻痒反応を示す吻側背部の皮膚において,誘導型NOS免疫陽性反応が,主に表皮に観察され,真皮中においても一部観察された。 2.一次求心線維の痒み反応:NC系マウスの背部皮膚を支配する一次求心線維の活動電位を細胞外記録すると,健常マウスと掻痒症マウスにおいて電位の異なる数種類の活動電位が観察された。掻痒症マウスの120分間の活動電位総数の平均が,健常マウスの約10倍に亢進していた。L-NAME(10mg/kg,i.v.)が投与直後より掻痒症マウスの神経活動を著明に減少させ,この抑制作用は約60分持続した。D-NAME(10mg/kg,i.v.)は明らかな抑制作用を示さなかった。 3.蚊刺によるアレルギー性の痒み:ICR系マウスの吻側背部をヒトスジシマカが刺すと,初回はほとんど掻き動作を示さなかったが,週2回の頻度で蚊刺を繰り返すと掻き動作が次第に増加した。Terfenadine(30mg/kg,p.o.)が,histamine(100nmol/site)の皮内注射による掻痒反応を抑制したが,蚊刺による掻痒反応を抑制しなかった。蚊の唾液腺抽出物の皮内注射も反復により掻き動作を徐々に増加し,蚊唾液腺抽出物を予め反復注射しておいたマウスは,蚊刺により明らかな掻痒反応を示した。蚊唾液腺抽出物の反復注射による掻痒反応の増大は,マスト細胞欠損マウスと対照健常マウスとでほとんど同じであった。
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