研究概要 |
1.NC系マウスの慢性自発性そう痒反応:NC系マウスを通常環境下で飼育すると1.5〜2ヶ月で皮膚炎,自発的掻き動作を示すようになった。血中IgE値は,健常マウスの約1,000倍と高値を示すが,IgE値と掻き動作の頻度とに相関がなかった。慢性自発性掻き動作は,ヒスタミン,サブスタンスP,セロトニンがほとんど関与しない。オピオイド拮抗薬がこの掻き動作を抑制するが,この抑制は脳内のmuオピオイドペプチド受容体の遮断によると考えられる。オピオイド拮抗薬は,中枢性鎮痒薬となる可能性がある。慢性自発的掻き動作を示すNCマウスの病変部皮膚で,NO濃度が増加し,皮膚NO合成酵素阻害薬が,皮膚中NO濃度の減少と自発的掻き動作の抑制を示した。NC系マウスの一次求心線維皮膚枝の発火頻度が健常マウスに比較して顕著に増加し,その発火頻度と掻き動作数に相関があった。NO合成酵素阻害薬は,一次求心線維皮膚枝の増加した発火頻度も顕著に抑制した。NOドナー自体の皮内注射が掻き動作を引き起こさないので,皮膚内で産生が増加したNOがそう痒を増強しているものと考えられる。 2.蚊刺によるマウスのそう痒反応:マウスが蚊刺を受けるとアレルギー性のそう痒反応を示すことを明らかにした。蚊の唾液腺抽出物を予め注射しておいても蚊刺による掻き動作が増加することから,蚊の唾液内の物質に対するアレルギー反応であると考えられる。蚊の唾液に対する感作状態のマウスにおいて,H_1ヒスタミン受容体遮断薬は,蚊刺による顕著な血漿血管外漏出を抑制したが,蚊刺による掻き動作を抑制しなかった。マウスの即時型アレルギー反応による痒みにはヒスタミンの関与が少ないと考えられる。 3.和漢薬の抗そう痒作用:痒みへの有効性が期待される漢方方剤22種を選び鎮痒効果を調べた。その中で,白虎加人参湯と加味逍遥散がNC系マウスの慢性自発的そう痒反応を有意に抑制した。白虎加人参湯はNC系マウスの皮膚温を低下させた。この方剤は,清熱作用を有する方剤に分類されているが,この作用がNC系マウスの慢性そう痒反応に対する抑制作用に一部寄与すると考えられる。
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