研究概要 |
本研究は脳内の神経-グリアー内皮細胞系の調節因子と考えられる細胞外マトリックス(ECM)の脳保護における役割を明確にすることを主目的とした。98年度は、内毒素であるLPS誘発の脳障害発現に対する各種のコンドロイチン硫酸化合物の脳保護作用について培養脳神経細胞を用いて比較検索を行った。99年度は,実際に効果的であった新規化合物(CS-PE)ならびにキノコからの抽出物質(CJ-01)の脳保護作用をLPSのみならずインビトロ系での脳虚血モデルを用い,さらにはサイトカイン類との関連性から追求した。方法として、1)培養細胞は,神経細胞が豊富な群,神経細胞とグリア細胞が混在した群、グリア細胞が豊富な群の三群とした。2)細胞障害は新規低蛍光マルチプレートに播種した細胞にCalcein AM(最終濃度5μM)添加後75分間incubateして測定した。3)細胞外TNFαの測定はElisa法,アポトーシスは蛍光法で測定した。4)LPSあるいはGluやアシドーシスの処置前後にCS-PEあるいはCJ-01を添加した。結果として、LPSや他の刺激因子によって誘発される細胞死は神経細胞やグリア細胞が混在した群で最も少ないが各因子にLPSを共存させると細胞死は亢進し,アポトーシス数も激減した。さらに,LPSは細胞外TNFαを急激に増量させるが,他の因子は細胞死を生じさせる割合は高いが細胞外TNFα量の増量の程度は低かった。一方、ECM調整機能を有すると思われるCS-PEやCJ-01は用量依存的な刺激因子誘発脳細胞死の阻害効果が観察された。さらに,LPS誘発によるTNFα産生を抑制したばかりではなくアポトーシス誘導効果が示唆された。本研究の成果は細胞外マトリックス調整作用を有する薬物は新しい脳保護治療としての可能性を有することが示唆された。さらに,本成績に関してインビボ系で証明する計画である。
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