研究概要 |
「目的」本研究は脳内神経保護機構の中で殊に細胞外マトリックスの役割を明らかとするため、コンドロイチン硫酸化合物の脳細胞死に対する薬理効果を新規陪養マイクロプレートの応用により蛍光法で検索した。「方法」(1)培養脳神経細胞は小脳顆粒細胞を生後8日令ラットから分取し、神経細胞とグリア細胞が混在した群とした。(2)細胞障害は、Calcein AM(最終濃度5μM)と生存細胞との反応を適確に測定することが可能な低蛍光ガラスを底面とするマイクロプレートに細胞を播種し検索した.細胞障害の程度は,Calcein AMの反応終了後、蛍光マルチウェルプレートリーダーで励起波長485nm、蛍光波長530nmで一定以上の蛍光を発する細胞のみ測定し生存率から算出した。(3)アシドーシスは細胞外液をpH6.3として、コンドロイチン硫酸(CS)ならびに合成コンドロイチン硫酸化合物(CS-PE)の添加はアシドーシス開始時に行った。「結果」(1)アシドーシスによって誘発される細胞死は、神経細胞やグリア細胞単独群で細胞障害や接着不全からの著明な生存率の低下が用量依存的、且つ、経時的に認められた。(2)神経細胞とグリア細胞の混在した細胞群ではアシドーシス20時間で細胞生存率は約60%であった。(3)CS投与群はアシドーシス誘発の細胞障害に対する明らかな保護効果は認められなかったが、CS-PE投与群は0.2-2.5μg/mlの範囲で用量依存的,且つ,負荷時間依存的な阻害効果が観察された。「考察」CS-PEが低濃度で神経保獲効果を示したことから、細胞外マトリックス調整作用を有する薬物はグリア細胞との協調効果により,新しい脳保護法とし臨床適用される可能性を有することが示唆された。
|