研究概要 |
自己抗体である抗下垂体抗体は、高率に多臓器内分泌障害、下垂体炎のみでなく甲状腺炎やI型糖尿病にも合併する。その抗原は成長ホルモンを含む下垂体ホルモンであることが明らかにされつつある。しかし、その臨床的意義は明らかになっていなかった。そこで,抗下垂体抗体が認識する自己抗原タンパクの解析を通して,自己抗体による内分泌疾患の発生を解明したいと考えた。結果として、私たちは,ラット下垂体を抗原とし,成長ホルモンであることが確認された.この免疫寛容の破綻を末梢血液内で判定するため、抗下垂体抗体を同定できる高感度酵素免疫測定法を開発し,多臓器内分泌障害の疾患特異的な臨床検査診断マーカーとして、その臨床的有用性を解析した。 私たちは、下垂体機能低下症や自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病,橋本病)だけでなくIDDMでも高率に抗下垂体抗体陽性を示すことを報告(Diabetes Care20;864,1997)し,バセドウ病の経過では、治療により減少することを見いだした。ラット下垂体を抗原としたウエスタンブロット法で,自己免疫性甲状腺疾患,糖尿病,下垂体性小人症での対応抗原を検索した結果,22kDaに陽性バンドがみられた(矢部、小林ら.J Lab Clin Med.1998)。このアミノ酸配列を解析し,成長ホルモンであることが確認された.これは患者血清中に抗GH抗体の存在を示唆するものである。近年の組織学的解析では、下垂体腫瘍でも、抗下垂体抗体が認識する自己抗原タンパクを有しており、病因に迫るものである。これらの知見を踏まえ,本研究は,抗下垂体抗体特異抗原エピトープを決定し,その制御機構を解析できた。
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