研究課題/領域番号 |
10470514
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中原 一彦 東京大学, 医学部・附属病院, 教授 (70101095)
|
研究分担者 |
渡邊 卓 杏林大学, 医学部, 助教授 (00191768)
東 克己 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (50159109)
米山 彰子 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (50175684)
池田 忠子 杏林大学, 医学部, 講師 (90099242)
|
キーワード | フローサイトメトリー / 慢性腎不全 / T リンパ球 / CD4 / CD25 / 抗原密度 |
研究概要 |
【緒言】 我々は、フローサイトメトリー(FCM)を用いて細胞表面抗原の抗原密度の新たな指標、FF係数を考案し提唱してきた。本年度は、このFF係数が臨床において実際に有用な免疫学的指標となり得るか否かを検討する目的で、慢性腎不全(CRF)において、FCMを用いた末梢血リンパ球サブセットの詳細な解析を行うと同時に、FF係数法を用いたCD4陽性T リンパ球上のCD4抗原密度の解析を行った。さらに、新たなリンパ球機能検査として、ConAによるリンパ芽球化試験の前後におけるCD4およびCD25抗原の抗原密度の定量的解析を同様にFF係数法を用いて行った。 【症例・方法】 対象はCRF症例に関して維持透析症例(HD) 22 例、透析導入前の末期腎不全症例(ESRD)8例の他、健常対照群(N) 22 例である。全血法による直接蛍光抗体法により末梢血単核球の三重染色を行った。さらに、HD 10 例、N 9 例を対象に末梢血単核球を用いたConA芽球化試験を行い、刺激前後におけるCD4陽性T リンパ球上のCD4、CD25抗原に関するFF係数を比較検討した。【結果】CRFでは、Nに比してCD8陽性Tリンパ球数に著変はみられないものの、CD4陽性T リンパ球の有意な低下が認められた。CD4陽性T リンパ球中の naive/memory 細胞の比率の変化はみられなかった。CD4に関するFF係数は、HDにおいてNに比して有意な高値を示した。Con4刺激によりCD4陽性T リンパ球上のCD4、CD25のFF係数の変化に関する検討では、芽球化CD4陽性Tリンパ球上のCD4は、HDではNに比して有意な高値を、一方CD25は有意な低値を示した。 【結語】 CRFにおける免疫能異常のメカニズムとして、CD4陽性T リンパ球の量的な減少とともに、このリンパ球亜群の機能的側面、すなわちCD4抗原の密度、さらには活性化状態におけるCD4およびCD25分子の発現レベルの変調が関与している可能性をFF係数を用いることにより明らかにすることが可能であった。このように、FF係数法を用いることにより、臨床免疫学においてこれまでほどんど検討の対象とされることのなかったリンパ球上の抗原量、抗原密度といった指標の臨床的意義を明らかにすることができる可能性が開かれたと考えている。
|