研究概要 |
行政の看護専門職の活動としては保健所及び市町村に所属する保健婦の活動を日本の保健婦によって記述された文献から整理した。その結果保健婦の活動体制としては,大正,昭和初期までは,自然発生的に社会事業の1つとして民間団体が看護婦を採用する形で発生してきたが保健所法と国民健康保険法の成立をきっかけに大枠が整理され行政組織に組み込まれ発展してきた。長年,我が国の保健衛生行政施策の重点課題となっていた結核対策における保健婦活動をとりあげ,活動実績を分析した結果,結核の罹患率を低下されることにつながる患者の早期発見,完全治療に導く適正医療の確保と的確な受療指導,患者管理の実施等で保健婦の役割を確認した。母子保健対策における保健婦の活動実績から,全乳幼児への保健サービスの浸透,保健サービスの質の維持向上,看護専門技術サービスの充実,制度の創設,社会資源の開発において保健婦の役割を認められた。 市町村の福祉分野における保健婦の業務実態分析からは保健衛生分野での経験豊富な保健婦が介護保険制度導入を契機に配置されていた。最も多くのものが担当していたのは相談業務であった。まず役割としては,医療機関や老人保健施設,特別養護老人ホームなどとの連絡がとりやすくなりサービス利用者の家族の様子や思いを代弁できることは住民のニードに合わせた行政サービス提供を促進していることである。つぎに,保健婦による医療面の判断が加わり福祉サービスの利用拡大を図ること,介護サービスの質の確保や介護サービスの有効活用を図ることなどが重要な役割と考えられる。つまり、市町村の福祉分野の保健婦は,保健分野で培われた看護専門職としての知識や技術を駆使して住民の福祉ニーズにこたえようとしており,保健・福祉政策を国民個々に浸透させていくことや,国民の健康問題の解決に向けた新たな施策を発信させていくという看護の機能を確認した。
|