研究概要 |
競技力向上の観点から,スポーツタレント発掘に関する研究が数多くなされてきているが,必ずしも有効な手がかりや指標は得られていない.その原因の一つとして,ジュニア期におけるトップ選手の体力や運動能力,形態などの一般的な項目の測定は行われているが,将来,世界的レベルで活躍する競技者はジュニア期にトップ選手でない場合が多いためだと考えられる,このようなことから,ジュニア期のトップ選手のみに焦点を絞らず,一般の子ども達に焦点を当て,まずは現状の把握を行っていくことが重要だと思われる,そこで,本研究では,ジュニア早期に当たる小学生段階におけるスポーツ・トレーニングの状況に関して,小学生のスポーツ指導者,全国のスポーツに関する研究者と臨床医を対象にアンケート調査を行った.これに加え,小学生段階における全国大会の開催に関しての調査も行い,小学生段階における望ましいスポーツ・トレーニングの方向性を探ることを目的として本研究を行った。 その結果,一部の団体においてトレーニングが長時間にわたって行われており,年間の試合数も多く,児童に対する精神的・身体的負担のかなり大きなことが予想された.また,実際に小学生が行っているスポーツ活動と研究者や臨床医が考える望ましいトレーニング状況の問いには隔たりのあることが示された.一方,指導者も概念としては望ましいトレーニング形態を把握している傾向にあった。これらの結果から,小学生期においでは一種目にしばられず,多くの種目を経験できるような環境づくりが重要であると考えられた.全国大会の開催については,全国大会出場経験を有する指導者においてのみ賛成が多く,全国大会出場経験を有しない指導者,研究者においては賛成・反対がほぼ同数であり,臨床医の多くが反対の意見を持っていることが明らかになった.本調査では,小学生段階における全国大会は子どものスポーツ活動への動機付けとなる一方で,トレーニング加熱の原因となり勝利至上主義へ導かれているという意見が多かった.今後,より客観的で科学的な立場から小学生におけるスポーツ・トレーニングと全国大会のあり方について検討していかなければならない。
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