高齢者の転倒の実態を明らかにし、転倒と身体特性との関連を検討するために、以下の調査研究を行った。 転倒体験を持つ成人296名(男性24名:70.3±7.8才、女性272名:61.5±11.5才)を対象に、質問紙により転倒の実態について調査・検討した。1年間に1回転倒したという者が51.3%、2回26.4%、3回12.8%、4回以上9.6%であった。転倒場所は、一般道路、歩道が47.5%と最も多く、次いで階段(24.0)等であった。傷害の種類では、骨折(43.8%)が最も多く、次いで打撲、切創・擦過創等の順であった。骨折と転倒方向とは関連があり、前方では膝、手・手関節、側方では、大腿、足部、後方では腰部、足関節の骨折が発生しやすいことが示された。また、加齢に伴って転倒により、骨折の発生率が確実に増大することが明らかになった。 次いで、高齢者50名を対象に身体特性を把握・評価した後、8週間の運動指導を実践し、転倒回避能力としての健脚度及び平衡機能の変化を検討した。10m全力歩行時間は6.2±2.1秒から5.6±1.7秒に最大1歩幅(下肢長当たり)は、1.30±0.22から1.40±0.23に有意に向上し、40cm踏み台昇降能力も有意に改善した。また、開眼単脚直立(右側直立:15.2±11.2秒→18.2±11.4秒)及び重心動揺計の各指標(単位面積軸跡長、単位時間軌跡長、外周面積のロンベルグ率)も有意に向上していることが示された。
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