高齢者の転倒予防を目的とした健康診断と運動・生活指導の計8週間のプログラム(6日の直接指導)を構築し、東京厚生年金病院内で実践・継続した。その参加者150名についての身体特性及び運動・生活指導の効果と問題点を検討した。参加者の性別は、男性18名(12.7%)、女性131名(87.3%)であり、平均年齢は71.3歳(47〜89歳)であった。過去5年間の転倒体験を有する者74名(49.3%)、ない者76名(50.7%)であった。 教室入室時と修了時の健脚度((1)10m全力歩行(2)最大一歩幅(下肢長当たり)(3)40cm踏台昇降)は、それぞれ (1) 6.1±1.5 → 5.7±1.3秒^* (2) 右 1.26±0.19 → 1.33±0.19^* 左 1.26±0.19 →1.32±0.19^* (^*p <0.05) (3) 容易 : 98→103(+5)、 困難 : 42→38(-4)、 不可 : 10→9(-1) と、いずれも統計学的にも有意な改善がみられた。また、平衡機能の指標として用いた開眼単脚直立検査では、 右側起立 : 15.9±1.8 →17.0±10.9^*(+1.1) 左側起立 : 15.3±11.0 →16.3±11.2(+1.0) と支持足側起立の値が向上していた。 89歳男性の事例でも、過去5回の骨折を経験した82歳の女性でも適切な運動指導の働きかけにより、転倒回避能力としての健脚度等が改善することが示された。一方、外反母趾が全体の71.3%にみられ、靴等の履き物指導や「足の感性を磨く」ような具体的な運動・生活指導も重要と考えられた。さらに、修了以後の高齢者の身体活動の継続についての工夫・指導も必要と考えられた。
|