研究課題/領域番号 |
10480008
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堤 定美 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (00028739)
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研究分担者 |
南部 敏之 株式会社ライフテック研究所, 所長
玄 丞烋 京都大学, 再生医科学研究所, 助教授 (90283655)
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キーワード | スポーツ障害 / 生体力学 / 衝撃解析 / マウスガード / 筋肉のモデル化 / 医用高分子工学 |
研究概要 |
競技中の接触や転倒事故による傷害の発生頻度は低くない。とくに、口腔関連の諸器官は人間の中枢となる脳組織に最も近接するものであり、さらに顎関節を含む可動性の構造を備えていることから、力学、運動学など多くの要素が絡み合い、生体力学における研究対象としての重要性は明白である。また、膝関節はあらゆるスポーツによる傷害発生の頻度が高く、歩行障害を引き起こす原因となりやすい。そこでまず、我々は予期せぬ障害が存在した場合に人間が受ける衝撃の程度を検討するとともに、衝撃吸収に及ぼす筋肉の役割を力学的に解析するため、コンピュータ・シミュレーションを用いて3次元解析を行った。解析にはマルチボディシステムを用いた動力学解析プログラムMADYMO(TNO-MADYMOジャパン社)を用いた。マルチボディで構成された全身モデルに、股関節、膝関節、足関節の運動に関与する主要な筋肉をモデル化して付着した。 本研究ではジャンプ着地時を想定し、高所より自由落下させた人体モデルと地面との衝突をシミュレーションし、着地時における全身の挙動を追跡しつつ、体の各部にかかる加速度、生体下肢関節や筋肉にかかる衝撃力について比較検討を行った。また接地前に筋肉の予備緊張の有無を筋肉の活動状態をあらわすパラメータを変化させることで表現し、衝撃力緩和に対する効果が大きいことを確認した。また、体重60kgのスポーツ選手が時速10kmで下顎オトガイ部に鉛直下方より衝突する場合を想定して、マウスガードの装着効果について解析した。その結果、衝突後130msには慣性により脳髄前方が頭蓋骨に強く押しつけられるが、マウスガード装着により最大応力値は40%低下した。マウスガードの口腔領域の傷害予防も勿論、確認できたが、さらに、脳震盪を始めとする脳神経系への傷害予防効果を持つことも期待できる。
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