横行小(T)管並びに筋小胞体(SR)は、筋細胞の発生初期の段階で、両者共に収縮タンパク質の形成とは独立して発生し分化が進行する。SRはT管に先じて発生し、その後両者が融合してtriadが形成される。形成初期のトライアドは縦断方向を示し、筋細胞内での位置は必ずしも定まってはいない。分化が進行するにつれて縦断方向を保持したまま徐々にA-I junction(あるいはZ線上)へと移動し、最終的に横断方向へ回転して分化が終了する。分化が終了したtriadは、単発的な力学的ストレスに対して非常に強固な構造上の特性を有し、ミオシンフィラメントとアクチンフィラメントのオーバーラップが完全に消失する以上にサルコメアを進展させても、その構造、配列に乱れが生じない。その一方で、除神経あるいは関節固定に伴う骨格筋の不活動は、筋細胞内膜系の形態、配列を著しく変化させる。不活動に伴い筋細胞内膜系は発育に逆行する変化を示し、縦断方向のT管の増加、triadの方向及び位置の変化が観察される。さらに、不活動に伴う代償作用と考えられるpentadあるいはheptadといった内膜系の特殊構造体の出現も観察される。一般的に長期間の運動トレーニングでは筋細胞内膜系の構造あるいは形態的特徴に顕著な変化は観察されないが、機能的変化として収縮速度の変化、酵素活性値の上昇、等が報告されている。従って、筋細胞内膜系においては構造あるいは形態的変化としては捕らえることができない、分子レベルでの機能的変化が生じるものと推察される。筋収縮蛋白質の構造崩壊を引き起こすことが知られている、伸張性筋収縮を伴う下り走を行わせたラット下肢骨格筋では、筋細胞内膜系が運動終了直後と、運動終了数日後の二段階に渡って崩壊し、その後再構築される。このように筋細胞内膜系は外的刺激に対して比較的容易にその構造、形態を変化させることで機能の変化を引き起こし、極めて合目的に運動に適応しているものと考えられる。
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